【アーティストインタビュー Vol.2】森聖華 Kiyoka Mori

アーティストインタビュー第2回目となる今回は、東京藝術大学大学院に在籍しており数々の個展、グループ展を経験している森聖華さんにインタビューをさせていただきました。

自己紹介と背景

自己紹介・アーティストとしての経歴 

アーティスト 森聖華
X(Twitter) https://twitter.com/diderot24da?s=20
Instagram

 https://www.instagram.com/kiyomori154cm/

展示歴

2021 8月グループ展『第57回杜察会作陶展』(日本橋三越)

2022 1月個展森聖華作陶展『瑞々』開催(ギャラリー七面坂途中)

2022 8月VINYLTOKYO(東京駅構内)ポップアップ開催

2023 2月グループ展「生を読む」(クマ財団ギャラリー)

2023 2月グループ展『雲仙市若手芸術家展つちの子の産声』(小浜体育館)

その他10回ほどグループ展開催

受賞、掲載歴

2020 12月公益財団法人現代美術文化振興財団4期生に採択される

2021 1月東京藝術大学卒業修了作品展平成藝術賞受賞

2021 3月東京藝大アートフェス2021ゲスト審査員賞(限研吾、佐藤卓)

2022 1月第16回藝大アートプラザ大賞展準大賞

2022 5月クマ財団クリエイター奨学生6期生に採択される

2022 8月ファッション誌「リンネル」作品掲載

 

経歴

1996年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科工芸専攻陶芸分野在籍。

自然豊かな土地で育った経験をもとに主に生物を用いて浄化を テーマとした陶芸作品を制作しています。また並行して生活を彩る食器類の制作も進めています。

アーティストとして活動するきっかけは何でしたか?

昔から人と関わるのが得意な方ではないと自覚しており、高校受験で進路を考えるタイミングで、自分はものづくりが好きで作品を見て人が驚く姿を見るのも好きだったため自分が生み出した作品を通して人と関わっていきたいと考え、美術系のコースがある高校を選んだことがきっかけですかね。

高校生のときに制作した作品「学生浪漫」2014/アクリル板、ニス、インク

 

どのような芸術的バックグラウンドがありますか?また、それはあなたのアートにどのように影響を与えていますか?

高校の修学旅行先のパリで見たステンドグラスや工芸品の美しさ、佐見焼の工房見学の際に見た陶芸作品の手作業による技術の素晴らしさに惹かれて、工芸を学びたいと思いました。

 

それらの経験をしたことで、無駄のない洗練された美しいフォルム等を意識したり、手作業だからこそできる唯一無二の作品を目指して制作したりしてます。

 アートスタイルとインスピレーション

 あなたのアートスタイルを説明してください。

陶の食器からオブジェまで幅広く制作してます。

「ヨーヨーマグカップ」 磁土

「魚弔」 2023/陶土、釉薬、金彩絵具、魚の骨 撮影:クマ財団事務局

あなたのインスピレーションの源は何ですか?尊敬するアーティストや文化、体験から影響を受けていますか?

影響を受けている作家は山本タカトさんや、河鍋暁斎、古屋兎丸さん、丸尾末広さん等。彼らの美しい中にも毒気がある世界観が好きです。

常々あった希死念慮を払拭するために"浄化"を表現してきました。

また、自然豊かな長崎の田舎で海や川で遊んだり釣りをして育ったため、主に水生生物をモチーフとした作品が多いです。

「釣りキチ親父」2021/陶土、釉薬、金彩絵具

第7回 東京藝術大学 平成藝術賞 受賞作家展「未来の大芸術家たち」2021/平成記念美術館ギャラリー

「キシネンリョ」2019/陶土、釉薬、銅板、ポンプ

 アートを作成する際のプロセスを教えてください。

モチーフがある場合はとことん観察し、特徴を掴みます。

頭の中で制作物のイメージを起こして、それを元にひたすら手を動かして形作ります。大抵の方はスケッチ等を描いてから制作をすると思うのですが、私の場合はスケッチを描く場合もありますが、粘土を触りながら感覚的に作ることのほうが多いです。ですのでよく失敗をするのですが、その失敗を恐れずにむしろ活用してとにかく手を動かして作品を制作しています。

 最近の作品とプロジェクト

 最近の作品や現在進行中のプロジェクトについて教えてください。

最近はフグをモチーフとした作品に力を入れています。修了制作では、フグはフク(福)とも呼ばれたりすることから、七福神とかけて七"フグ"神ということでフグの神様を7匹制作しようと考えています。

「フグ豆皿」2023/陶土、釉薬

「幸せを呼ぶハッピー・パファ〜ちゃんとそのお子さん」2022/2023 /陶土、釉薬

その作品を通じて何を表現しようとしていますか?

見た人に幸せをもたらすようなフグ神様を制作しようと思っています。私は制作を通して"浄化" "生と死"を表現してきました。そして自分の作品を振り返ってみると主に弔いという死の方を多く表現していたので、学生最後の修了制作では、自分が制作しても楽しめて幸せになれるような生を実感できる作品を制作しようと考えています。

見てくださった方々がフフッと笑ってくださったり思わずお腹を撫でて愛でたくなるようなフグ神様を制作できるよう努めます。

その作品がもたらす意味やメッセージについてどのように考えていますか?

日々の生活に疲れた方でもこの作品を見たり撫でたりして少しでも安らいでいただけたらなと考えています。


学生とアーティストのバランス

 学業とアートの創作活動をどのようにバランスさせていますか?

藝大の陶芸研究室の場合だとろくろの技術習得課題が主に出題されます。ですので技術習得とともに作りたいフォルムや釉薬の調子など、自分が表現したいものを制作しました。

陶芸研究室に入って最初の課題 「湯呑み300個制作」2018/陶土、釉薬

「六角大皿」2019/陶土、釉薬

将来に不安があったため一応美術工芸の教員免許も取得しました。卒業制作期間中に教育実習があってとても大変だったのですが、そこは割り切って教育実習中はそちらに専念して、それが終わり次第ハイスピードで卒制を作り上げました。

 学生生活があなたのアートにどのように影響を与えていますか?

色々な観点を持った教員や学生が在籍しているので、さまざまな考えをインプットが出来ます。また学生らは良き仲間でもありますが切磋琢磨し合うライバルだとも思っていまして、卒業後も一緒に陶芸界を盛り上げていけたらなとか考えてます。

同期と制作した窯「百足窯」2022

また、全く会ったことのない人とも作品を通して交流が広がったりもするので、そういったところは美術系大学ならではの魅力だなと感じています。

 アーティストとしての展望

 卒業・修了後、アーティストとしてのキャリアを追求しますか?

就職はしますが、陶芸は続けていくつもりです。キャリアも追求したいと考えてます。

 あなたの理想的なアートキャリアとはどのようなものですか?

この頃思うことなのですが、例えば売れている作家が自分のネームバリューに甘えて力も心もこもってない適当な作品を作りそれをネームバリューに吸い寄せられた人たちが買うという一部の現状が非常に嫌いなので、流行に流されず、自分が良いと思うものを着実に作り出していきたいと考えています。

名前自体を売り出したいとは思っておらずあくまで自分は裏方として、作品で勝負していきたいです。

 5年後、10年後のご自身をどのように見ていますか?

仕事もしつつ、自分の納得のできる作品を生み出せていたらなと考えてます。

「螺旋ゴブレット 翡翠」2023/陶土、釉薬

「蓮子ゴブレット 」2023/陶土、釉薬

 アドバイス

 同じように学生でありながらアーティストとしてのキャリアを追求しようとしている他の人々に対して何かアドバイスはありますか?

私はアドバイスできるような立場ではないのですが強いて言うなら、近頃はSNSの普及も影響して学生のうちから有名な方々が多く見受けられ、自分も早く売れっ子にならなきゃと焦る方もいるかもしれないですが、焦らなくても大丈夫だと思います。私の場合学生のうちに色々やっとかなきゃと思い、早とちりしてしまうことが多々あったので、学生の一時期だけを考えるのではなく将来的にアーティストとして生きるためにはどうしたら良いかを熟考して行動したら良いのではないかと考えています。工芸の場合でしたら着実に技術を積んで一つ一つの展示を大事にすれば必ず未来につながる機会が訪れるのかなと思います。

過去の展示 「森聖華 作陶展 瑞々」2022 ギャラリー七面坂途中

過去の展示 「生を読む」2023 クマ財団ギャラリー 撮影:クマ財団事務局

その他 

思考のプロセス、インスピレーションの源、そしてアートに対する情熱を教えていただければと思います。

陶芸作品では質感に気を使い表現の幅を広げています。

今後の展示予定

第59回杜窯会作陶展 

会期:8/23(水)~8/29(火)

場所:日本橋三越本店 本館6階 美術工芸サロン

https://t.co/RMjixmbbdd

 

銀茶会

会期:10月

場所:銀座 伊東屋 G.Itoya 10F HandShake Lounge